豚肉

豚肉にもあった霜降り肉

  • コピーしました

「霜降り」というと和牛肉を思い浮かべますが、最近は霜降りの銘柄豚肉が増えつつあります。

霜降り豚肉にするとどんな利点があるのか、霜降り豚肉を作る方法などを紹介します。

霜降りにすると?

 

①.軟らかさが向上する

 

②.香りが向上する。

  豚肉が甘く感じる。

 

③.ジューシーさが向上する。(多汁性)

脂肪も多汁性を感じさせる要因になっています。

 

霜降り豚肉は結構ヘルシー。

和牛では脂肪含有量は30%~40%で、霜降り豚肉は脂肪含量が4%以上になると霜降りになります。
欧米の豚肉は大体1~2%くらい、国産豚肉だと大体2~3%くらいで、脂肪交雑で有名なTOKYO-Xでも5%くらいです。

 

霜降り豚肉の歴史

1990年代半ば、このころは、国内には霜降りの豚肉はほとんどありませんでした。
1997年、東京都の畜産試験場が TOKYO-Xをつくりました。
その後、宮城県でつくったデュロックの系統の「しもふりレッド」が出てきました。
2000年になると、品種改良に留まらず、餌による霜降りブランドが登場してきました。

 

エコフィードの拡大の効果

エコフィードとは日本語の造語で、食品由来飼料、食品として利用されなかったものを餌化したものです。
エコフィードの普及・拡大は、結果として、安価な輸入豚肉が大量に入ってくる現状で、飼料費を下げ、飼料自給率を上げ、さらに霜降り化することによって、国産豚肉を守る1つの有効な手段になります。

戦後から始まった残飯養豚がわが国の養豚拡大の始まりといえます。
餌によって脂肪質が大きく変わり、軟らかい脂肪=軟脂(低品質)の改善に成功しました。
それだけではなく、飼料と肉質についても実践で確かめていきました。
まず酸化油脂を含む飼料をやめました。
そして動物性の餌、これは魚粉のほかにもいろいろなものが入っていたのですが、これもできるだけ避けました。

そして、注目したのが廃棄パンです。
当時、パンが非常に余っていて、大手パン会社は年間 10万トンを超えるパンを廃棄しておりました。
われわれはそのころ、廃棄パンを使って霜降り豚肉の生産に成功しており、これが全国に普及し、現在では廃棄パンのほとんどがエコフィードとして利用されるようになっています。
これら試行錯誤を繰り返しながら研究を進めて脂肪交雑、いわゆる霜降り豚肉ができるようになり、この結果、肉質も大きく向上しました。
エコフィードで生産された豚肉は1999年から2000年には配合飼料給与豚肉並みの価格になって、2000年から2002年にはエコフィード給与豚肉が配合飼料給与豚肉の価格を超えました。

養豚の生産費の大体 6割は餌代です。
飼料の大半 8割くらいは輸入穀類ですから、餌代が非常に高くかかります。
新たなエコフィード養豚では、個々に残飯を処理するのではなくて、飼料化工場などで集中処理をして、取り扱いやすくしており、衛生的で臭いの発生も抑えています。

 

餌によって霜降り豚肉をつくる方法

餌によって霜降り豚肉をつくる方法は3つあります。

 

①低たんぱく質法

1994年から1995年にかけて提唱された方法で、低たんぱく質飼料で豚を飼うと筋内脂肪ができるという報告がされています。
しかし、この方法では発育と肉量が著しく低下してしまって、実用化は困難でした。

 

②低リジン法

これは 1996年に海外で発表されたのですが、2005年には国内で論文が発表され注目を集めました。
研究が進められた結果、実際には発育と肉量の低下の問題が解決できず、こちらも実用化には至りませんでした。

 

③アミノ酸バランス法

パンを与えることによってサシが高まる、霜降りになることはわかっていたのですが、それは低たんぱく質だからでも、低リジンだからでもありませんでした。
その理由は何か、まだはっきりしたメカニズムがわかっていないのですが、アミノ酸の比率が関係することがわかり、アミノ酸バランス法と名付けました。
どういうことかというと、魚粉や動物性たんぱく質の餌は与えないと言いましたが、穀類自体はリジン、メチオニンが主に不足していますから、通常配合飼料には、合成のものを添加しています。
しかしそれも添加しなかったことが、かえって良い結果を生んだのではないか。
しかもエコフィード自体は人の食べる物で、基本的には高たんぱく質です。
試行錯誤を繰り返し、リジンの量を豚の適切な量にして高たんぱく質にしました。
これがアミノ酸バランス法です。

 

霜降りはおいしさの評価だけでない

霜降りはおいしさの評価だけでなく赤肉の品質でも輸入肉に差をつけます。

欧米では霜降り豚肉は売れないらしい。

実は、赤身で発育の良いものは、遺伝的に低品質肉が発生しやすく、赤肉の品質でも差がつきます。
霜降りと赤身肉の品質の良いことが、国産豚肉を守る重要なポイントではないかと考えています。

 

まとめ

豚肉の霜降り化は食味を向上させます。

霜降り化しても、脂肪量はそれほど多くなりません。

飼料による脂肪交雑形成メカニズムの詳細はこれからの研究課題で、ヒトの肥満研究に通じる可能性もあります。

  • コピーしました